2020四季彩,花日記 秋の植物画作品展 スライドショー 葉の色を抑えてモノトーンにして目立たない引立て役に徹し、花芯の黄色と赤紫の補色対比が確実に視線を捉えています。葉の重なり際のクッキリコントラスト彩色により葉の上下感、前後感がよく出ています。 確実に花芯に集客しています。左上、右上、下の3つの花が前後感のある三角形を形成しており、その中心に主役を配置することにより各花の前後関係が分かり易くなっている。上の花が奥へ、下の花が前に突き出ている。 エリゲロン(梶田美幸):ていねいに観察し、ていねいに時間をかけて描かれた秀作です。作者のこだわりがあふれています。たくさんの花弁へのハイライト付けにより筒状の舌状花の丸みがうまく出ています。 葉先を濃い色で締めてあるので絵全体に目がゆき届いています。曲面濃淡の彩色により厚手の凹凸ある葉の特徴が出ました。日常生活の様々な壁の中で苦労して描かれただろうと感じとりました。 中心の黄色い蕾が注目される理由は、蕾の上の赤紫色の茎の影響です。黄色と紫色の補色対比効果による注視点になっています。そこまで計算しながら描かなくてもよいです。楽しんで描いて下さい。 沈丁花、ジンチョウゲ:前田八世位【植物の生命力、魅力に関心が持てました】ご自宅の庭の植物たちを描かれています。紅白の沈丁花を並べました。早春の香りがよみがえります。 花弁の先端に視線が届き、花全体が見られています。葉の彩度を抑えることにより絵全体が落ち着きました。これから開こうとする花の視線方向、左上の余白が若い花の希望を感じさせます。 シベ先の花粉が注目点となっています。全体が淡い彩色であるため、注目させたいポイントにEdge効果を施すだけで視線を獲得できています。花粉の陰色にローアンバーを重ね塗りした効果です。 オリエンタルリリー:山口悦子【とにかく頑張って描きました】汚れとか濁りを感じない清潔感あふれる作品になりました。最近チマチマ制作から抜け出され描画スピードをUpされました。 緑の葉の一部や茎にも赤を散りばめることにより視線の流れを作った。水彩絵具による赤い葉の彩色は緑とオペラ等の重色により濁りを抑えた。 赤系と緑系の補色対比部分が注視点となり、白い花がかすんでしまうのは仕方ないでしょう。花はそれとなく見てもらえばよしとしましょう。 五色ドクダミ・カメレオン:水野三代子:名前のとおり赤黄白などカラフルな斑が入ります。赤っぽい葉のどぎつ目の異質感が魅力の様です。 主役が花芯であり、大きな面積を占める紫と黄色の補色対比が強力なFocal Pointとなっています。実際の花弁には明白なハイライトは見えないが鈍いハイライトを設けたことで花への視線滞在時間が増えています。 主役が明確でわかりやすい演出です。過去の作品を思い浮かべると、たぶん作者の描く動機は少し紫がかった葉にあると勝手に推測します。花の赤紫が蕾や葉にかすかに散りばめられており、心理的に安心感を得ます。 アークトチス、羽衣菊:臼井啓子【花言葉は、個性豊か、若き日の思い出】ドレッシーな雰囲気の作品になりました。モチーフ選びにこだわりを持たれている作者です。地面を描き加えることで安定感が出ています。 葉先の色彩を暗い色や茶色系で引き締めたことにより画面全体に視線が配られています。左下の茶色の枯れ葉が味を出しています。サインの位置は視線回転補助線に最適化されています。 左上の花がファースト焦点となり、視線が他の花を巡りながら葉先に移ります。主役を焦点にする為に葯の黄色と花弁の紫色との補色対比、シベに生えている白い毛がEdge感を出しています。 ムラサキツユクサ:戸村一代【雨にも負けず咲き続け強い花です】写真には一切頼らず現物を観察して描かれる姿勢はGoodです。思い入れがある身近の植物をモチーフにされています。 全体が淡い色の場合は注目点のコントラストを少し高めるだけでその部分を主役化できます。濃く塗りすぎるとそういう操作が難しくなる。茶色系が必要な場合は緑系と赤系の混色を使います。茶色とは顔料が異なります。 集合花の基部に視線が往く理由は、基部に残っている苞の色が茶色系だからです。本作品では狙い通りで良いですが、よく木の幹に茶色系絵具をそのまま使うのを見かけますが、その部分が必要以上に目を引くので要注意。 ヒメアガパンサス:伊藤美代子【夏になると足元にやさしい色合いの花を咲かせてくれます】清楚で夏に清涼感を与えてくれるスッキリとした作品になり、講師も気に入っています。これからもこのような清純派路線を期待します。 葉群が円弧状に配置され大きな円を構成しています。葉の重なり部の陰影も意識されており適度な奥行き感が出ています。1点投光での光の方向を更に強く意識するといつもハイライトを配慮するようになり絵が更に立体化します。 ゼラニウムを描く課題は、花房の球体感出し、葉の模様の彩色です。花房の明暗コントラストを高めて更に立体化可能。葉の模様表現法は緑に透明度の高い赤系を重色したり、模様を鉛筆等で塗っておき緑を重ねるなどあります。 ゼラニューム :増田美和子【切り花はすぐしおれますが鉢植えだと長く咲いているのでいつでも描けるし手軽に手に入るので描き始めました】花弁の数は100枚以上、葉が20枚も。大作を描くたいへんさが良く分かります。 筒状花はフィボナッチ級数的な規則性で整列しながら凹凸面を形成している。思い切った陰を付けてドラマチックな注視点にしています。陰色は紫系とオペラ系を使い分けて重色している。陰を付与する位置判断がポイントです。 黄色の花弁を一層ドラマチックにするためには、花弁の凸筋にハイライトを作ることと併せて何段階かの陰色を施すことでコントラストを稼ぐ。陰色は黄橙系、緑系、紫系など醸し出したいイメージに合う色相を選びます。 ヒマワリ・サマーサンリッチパイ:星野弘子【ヒマワリの花芯の筒状花集合の描写に挑戦】上の花と下の花の互いの視線というか会話を感じる絵です。下がご主人かな?安定した三角構図です。産毛もうまく表現できています。 根にはランの強さの秘密があり、ランの植物画には根の生態を描くことが多いです。描くからには先入観で描くことなく、より正確な根のスケッチと細かい質感を感じながら彩色を進められることを期待します。 黄緑のペタルと紫のリップの補色対比が魅力のランです。花も根も描くとどちらかが画面に納まらないので花だけを取り出した。更に正面、側面、切断面の花を並べ、構図上都合の良い位置に配置して植物画にしました。 ジゴペタルム:和田眞里子(Cameleon Orchds社のZygopetalum)【香りが気に入り購入し大切に育てています。私のお気に入りの蘭です】いつも現物を観察しながら描かれるのはVery Goodです。 花芯の凸感を出す陰付け、雄しべは円状の群として陰影を付け、個々の花に立体感を出している。透明水彩絵具による実の朱色、濃赤紫の彩色はオレンジ、オペラの重色をベースにして別色の重色により個々の粒色を調整します。各粒には光沢を付けます。 下の実を重そうにし、上の花を軽やかにした安定感のある配色です。実と花にしっかり視線が届いています。実の房と房との重なりの前後感、立体感を出す陰影彩色がポイントです。孫が実をつまんで口に入れる姿が浮かんでくるような羨ましい絵です。 ブラックベリー:西井聖子【花の美しさにひかれ育てたブラックベリー。実は孫の口とヒヨドリの口に…】思い入れと描く必然性があるモチーフですね。葉は花や実に比べ主張を抑えつつ薄暗くして絵を落ち着かせながらも葉色にバリエーションがあります。 薄い緑と青だけのスッキリした絵です。人の視覚の癖を心得て構図や配色を仕掛ければ人目を引くことがわかります。大倫の集合花では前後左右の個々の花の彩色に変化を付けると共に大きな塊の立体感も表現します。 この絵の魅力は30度傾斜させた動きのある構図にあります。葉を折り曲げて回転させる仕掛けもあります。茶色を使うとそこに目が往きます。上の花下の苞と右下の葉先に適度の茶色を使って視線誘導しています。 アガパンサス :等々力三枝子【集合花を描くのは初めてなので描いてみたかった。葉の伸びやかな線が気に入っている】構図を工夫されました。下の花の追加で引き立て役が決まり、気持ちが落ち着きました。 白い花弁自体がファーストインプレッションにならなくても雌しべの柱頭のハイライトが焦点となっているので花が注目されます。白花は濃淡何種類かのグレーで形状、立体感、硬さ柔らかさを出すように彩色します。葉のハイライトを視線が巡っています。よく描けましたよ。 ユリを描く場合、つい花に目が往きますが、実は引き立て役の蕾をリアルに描くと主役が輝きます。蕾のボディの凹凸感や筋の流れを彩色することで主役の花が引き立つのです。絵画は途中のミスが付き物、修正も画法の内、修正しながら思いを実現しましょう。 オリエンタルユリ:山田玲子【白いユリの清楚感が出せたら、と思った。香りは伝わらないので。黒くならないように、が私の注意点。どうすれば、と頭を悩ました】講師も黒くならないように緊張しました。講師の不感症的な強めの陰付けが期待にそえないかも、と気を付けました。 この絵の魅力は枝ぶりです。直立構図にせず茎を曲げて品を作っておき、各葉先をわずかなに曲げて大きな回転を感じるように視線誘導をしています。 グリーンから黄、朱色へと遷移する成熟過程を描かれました。緑と赤の補色対比効果により焦点を作っています。前方に突き出す葉に挑戦されました。 ホウズキ:岡田久枝【花の白に対照的な実が緑から赤になる様子が好きです】多くの方が描きたいモチーフの一つです。白い地味な花も魅力的です。 視線が左右往き来しながら後ろの花弁にも目がゆき届いています。奥行きの無い平坦なモチーフは花弁の重なりを強調することで奥行き感を出します。 花芯の黄色と花弁の紫の補色対比が視線を集めています。花をランダム配置し、3本の茎先をサインに収束すべく向けることで視線を回転誘導しています。 ビオラ:佐藤仁子【「揺るがない魂」紫色のビオラの花言葉です♪】3人家族の心境を表す絵かしら?右の一輪は主人かしら?中間の余白に意味を感じる。 基本色は緑とピンクの2色、ピンクは濃淡同色対比というシンプルさでありそれが清楚感の要因だと思います。葉脈の向きが右回り視線回転を促しています。 左上の細く薄色の蔓にも視線を誘導するために蔓の分岐点と先端を濃い色で絞めています。茎を取り囲む托葉に鈍いハイライトを付けて立体感を増したい。 エンドウの花:佐藤加代子【白い花だと思っていたら赤い花が咲き、うれしくてたくさん写真を撮りました】動きと緊張感を感じる逆三角形構図ですね。 赤味を帯びた実を追加して配色が完成。実の緑と赤の補色対比が人目を惹き付けます。花芯の細かいつぼみの集合体にミクロな陰とハイライトを付けてEdge効果を出して注視点にしている。 花のように見える4枚の白いガクの先端を濃い色で絞めることにより視線が広く巡るようになっています。葉の先端のわずかな曲がり方向が視線を誘導し、大きな回転を感じさせています。 ヤマボウシ:沖 桃子【我が家の新築時に植えたシンボルツリーです。一緒に成長していきます】深い愛着を込めて描かれ、我が家のヤマボウシからジャムや果実酒の幸が来るでしょう。 6枚の葉先、茎の先、サインを巡る大きな視線の流れが出来ている。絵の中に視線の小さな回転と大きな回転が感じられます。葉のハイライトが絶妙。左へ延びる前の葉の形状とハイライトが絵に変化と動きを作り出しています。 花房全体に過度な陰影を付与して過度に丸みを強調しない控えめなところが現在のご心境を表しているのでしょう。花房の周囲で小さな回転を感じさせ、更に、花房の中に主役部分を作っていただきましたのはうれしいです。 アジサイ:大矢直美【雨に濡れたアジサイがとてもきれいだったので描きました。花の奥の部分が難しかったです】花の奥は引立て役にするとよいです。濡れるという言葉の控えめで落ち着いた感性がケバくない色味になりました。 予め主役の花を決めて彩色し、そこへの視線誘導ができています。茎に僅かな赤みを付けることで下方へも目線を作っています。地味な葉ではあるが葉にハイライトを設けることにより葉に注目させることが課題です。 三角構図の頂点に視線が往き、安心感と安定感を感じます。オダマキの特徴である花弁の後ろの複雑形状の距が立体的に描かれており、実直さを感じました。幼少からの馴染み、故郷の埴生の宿の草花かしら? オダマキ:高橋千ひろ【このオダマキは空家になった故郷の庭に毎年咲いてくれます。いろいろな思い出と共に描きました】葉の切れ込み部の葉脈に見える小さな白点が特徴、描くのに苦労されました。 主役の花の外周を巡る小さな回転と、画面全体の大きな回転により絵にダイナミックな動きが感じられます。上の花の左側へ曲がっている2本の花弁が巧妙に回転効果を出している。 シベ束の先がFocal pointとなって作者の思惑通りの彩色に成功しています。各花弁の先端の色がグレーで絞めてあるので視線が小さなカーブを辿り花弁の先まで往き届いています。 クジャクサボテン:足立順子【わぁ、きれいに咲いたね。この思いが少しでも伝われば…】作者の画風の特徴である柔らかでゴージャスというかドレッシーというか、豪華です。 左上の明るい周辺から右下の暗い陰の部分、サインへと視線が巡回しています。額装して絵を飾る場合は、薄色無彩色の丸窓のマットにするとより一層可愛らしい出来栄えになるでしょう。 グリーンの葉を間に介した黄と紫の補色対比、赤と緑の補色対比が美しく感じさせています。中心部に細かいハイライトを施すなどしてEdge効果を出し中心部も注視させる工夫をしましょう。 ハボタン:横山香代子【レースの様な葉が可愛らしくて描きたくなりました】カーブしたサインがオシャレ感と回転効果を出しています。超多数のフリルを描き切る集中力は細密画向きです。 地味だが一番視てほしい植物を中心に置き、4隅の1/3、1/3の部分の内の1点で目をひきつけ、その後に上下左右に視線を誘導しながら中心部に注目できればまずはよし。 複数の地味な緑系の植物を図鑑のように並べる場合ですが、葉柄や根本などに見られるかすかな赤い色味を見逃さず大切に配色に活かす。色を散りばめた効果を感じます。 里山の草花: 三宅洋子【里山へ散歩に出ました。道の小さなかわいい草花に出会ってとてもうれしい散歩でした】自粛期間、作者の内面を感じる身近の草花たちですね。 花弁のビロード感を感じる錯視技法が認められる。シベ先に注目させて視線滞在時間も一番長い。その後、各花弁、葉のハイライト、葉先へと視線が巡る。 意図通り主役が焦点となっている。クッキリクリアーで色バリエーションが豊富、形と色のバランスも良い。各葉先にわたる全体に視線が動いています。 ヘメロカリス:寺井秀子【梅雨の曇り空にひと際美しい花が庭に咲きます。次から次へと咲き乱れる一日花。短命が残念。来年も花を見るのが楽しみです】 人の視覚は右回りの視線の流れを好むようです。コウヤマキのように長い葉を持つ植物を描く場合、各葉の曲がり具合・曲がる方向を配慮して配置し、右回りの回転を感じる構図にしています。 三角形の頂点に位置する3つの赤茶色の実に目が往く。人の視覚は意外と茶色に強く反応する。深緑の葉には白っぽいスジが入っている。それを丹念に描いたことにより全体の葉に目が届いている。 コウヤマキ:久田陸昭【家の庭で大切に育てていたコウヤマキ。ある日実がついているのに気付き珍しいのでモチーフにしました】松かさから生えている葉を使い構図に回転を与えています。 和名は風鈴草。ふっくらした釣り鐘型の花の花芯の黄色と花弁袋の紫の補色対比が美しくて力強いです。素直な作品になりました。茎を左寄りの位置に配置して右側の枝を伸ばし、右上に余白を設けたことにより花に視線、絵に方向性が出ました。 長い円筒を立体的かつ深さを表現する彩色が課題です。主役候補が3人いるので彩色の差を付けることで一人に絞ることも課題。その結果画面中心付近の花が焦点となりました。黄色と紫の補色対比のわずかな強度差が効くものです。 カンパニュラ・メディウム:,宮川祐子【昔から大好きだった「つりがね草」。紫色がきれい】1990年ころの雑誌クロワッサンで谷崎潤一郎の妻のたまう「私は常に紫の小物を身に付けていないと落ち着きませんのよ」。刺激的でした。 最もハイライトの高い左の花の花弁に視線が向き、そこから3つの花に視線が回転しています。赤茶ビロード感を出すには花弁の鈍いハイライト色が決め手です。 ハイライトのある赤茶色系花弁が注目される傾向が強いことがわかります。更に、前方の葉のハイライトを数箇所設ければ下部の方への視線の流れが増えるでしょう。 オステオスペルマム:山口浩子【京都在住の娘の所で描きました。実物の色に近づけるのに苦労しました】花弁の薄いハイライト色がビロード感の錯視効果を出しています。 濁りのない力強い彩色が作者の特長ですが、各葉先を濁り色で締めることにより画面全体へ視線を導いています。茎から右方向への枝分かれする茎で空白を埋めるとともに右方向への回転を補助しています。 花弁において、紫と黄色の隣接する補色対比を数箇所設けて主役の花を長時間注視させている。左から1/3の位置に茎を配置して画面全体に粗密感を作り、右の余白方向への花自体の視線を感じさせる工夫があります。 ジャーマンアイリス:藤川悟【隣人から株分けして頂いたドイツアヤメが早くも今春咲いたのでさっそく描いてみた。花の形をとるのが難しかったがどうにか思い描いたように描くことができた】。秀逸です。 右の後ろ向きの蕾にかすかな黄緑とピンクを感じさせることで視線を誘導しています。サインは下方への視線の流れを作っている。葉のハイライトを使い下方も見せたい。 花芯に重なる花びらをを丹念に彩色することによりEdge効果が出て注目点になりました。蔓バラに限らず構図を構想する時は自生している自然の姿も参考にしましょう。 ピエールロンサール(吉永雅美):自宅で育てているバラだそうです。淡いピンクが人気の蔓バラです。左右下方への末広がり葉柄が三角構図を成して安定感があります。 花弁下の茎と花弁の高コントラスト部分がfocal point(注目点、焦点)となっており、視線をキャッチ。そこから花弁の方に視線が移動しています。花芯もシベ先もしっかり見られているのはシベに施された長いハイライトと陰の効果です。 花弁下の2本の赤緑色V字型茎と花弁端との高コントラストが強いEdgeを形成し、通りがかる人の視線をキャッチするでしょう。茎の暗さと花弁の明るさのトーン対比もうまい。右下の花弁先端からサインへの視線流があり、大きな回転を感じる。 アマリリス(仲野美恵子)【輝くばかりの美しさ、という花言葉どおり、花屋でひと際目立っていました】緊張感ある逆三角構図。右の花が控えめに彩色され主役を引き立てる。花芯の緑と赤の色対比が白い領域を介しているので一層素敵に感じます。 先ず主役が焦点となり、そこから上の花、下の葉へと視線が回っています。構想時の構図意図通りに視線が流れています。左下の葉を加えて下から上の花への視線の流れを作っています。 当初の構図、配色の意図どおり、下の花が主役の機能を果たして注視されています。下のガクの彩度を高めた効果と,花芯のシベの細かいエッジを感じる質感が効いています。 ヘレボルス・オリエンタリス(レンテンローズ)中村雅子【友人からいただき色が気に入ったので描いてみました】右に30度傾いた動きのある「逆くの字」の角に主役を置きました。 門型構図の右上の花が作者の狙い通りFocal pointとなっています。紫と黄色の補色対比効果が絵を見る人の気を引き付けています。補色の間に白を介することにより対比効果がマイルドになり上品さが出ています。 下に転がる豆に視線が往くのがおもしろい。豆の配置のランダム感が快く感じるのと、豆に付与した影の効果に引き付けられるからでしょう。陰影をつけることで立体感を感じるると視線が滞留するわけです。 ササゲ:國定泰子【毎年よしずがわりに窓を覆ってくれます。部屋温度を下げる効果に加え、食べても美味しい。我が家のエンゲル係数を下げる貴重な植物です】下の余白がエンゲル係数の垂れ下がり感をだしています。 主役の花から左右、上下へと全体に視線が移動しています。産毛が覆う葉の鈍いハイライトにより前方の3枚の葉にも視線が注がれています。後景と茎の色を抑えて奥行き感と前景に注目させた効果が出ています。 誰もが一度は描きたいと思うが躊躇する花です。予め定めた位置の花が焦点になっています。すべての花に視線が流れているのは紫の花にハイライトを施したことによります。明白な光沢がなくてもハイライトを付けた効果です。 メキシカンブッシュセージ:伊藤照子【その昔サンフランシスコに旅した時出会った花です。濃い紫の色に魅了されました】後方トーンを落として奥行き感を出している。S字状の末広がり三角構図によりうねり感と安定感あり 。 右上がりのサインが視線の流れを補完する役割をしている。配色、花の蕾の位置を工夫、S字状の茎により柔らかさと動きを感じさせます。 構図構想通り主役の花が注視されています。色バランス良く、スッキリ落ち着いた出来ばえです。細かい葉の節々のEdge効果が効いています。 ニゲラ、クロタネソウ:宮川信夫【 畑に可愛く咲いている花を見て心が和み描きました】最近、作者の画風が定着してきました。 先ず主役部分に視線が行き、そこから葉陰、果実の周囲に視線が巡るのは、丸いモチーフに見られる視線流の特徴です。ちょっとした葉先の向きが絵に回転を感じさせて良し。種子の並び方の規則性を見つけて要領よくスケッチし、種子1個づつに番号を書いて1つづつ彩色します。 一つの果実の中にも注目点を1箇所決め、その部分に各種Edge処理を施すことにより狙い通り主役に視線を集めています。更に左上のハイライトを強調すると更に立体感が出ます。サインを左下に置き、影を右下に配置した三角構図により安定感を出しています。 吉岡昌子:パイナップル【描くのが遅いので日持ちする物にした。店頭に出た時には熟成しているそうです。スケッチに数日、突起部分にマチ針で番号を付けた。普段見もしない表皮を観察した】。右端に思い切って陰を付け、左端に控えめにトーンを強くすることで丸みを出しています。 前面の葉先を下に向けることによりサインへ視線を誘導。サインも絵のうち、機能しています。大きな視線の流れとともに楕円形の花房部分にも小さな視線回転ができています。 地味ながら、主役部分への細かい質感とコントラスト強調により主役の花(ガク)のが最初の注目点となっています。葉の重なりを作ることにより絵に立体感を出しています。 七段花(しちだんか)菊池秀子【6月の明るく軽やかな光の中に咲く七段花。表現できたかな?】ヤマアジサイの中でも幻の花といわれる。清楚で素朴な落ち着いた絵になりました。 作者の好みの地味なモチーフであるが、花から花へと視線が往き来して見る人を立ち止まらせる絵です。動きが感じられる逆三角構図によりキリッとした緊張感も感じます。 たくさんの花の中で予め決めた主役の花への注目に成功しています。下部の茎や枝分かれ部に赤みを持たせ、茎にも目が届き、画面全体への大きな視線流ができています。 ジャーマンカモミール:水野繁美【こぼれ種で咲いている大好きな花です。拡大鏡を手にして描きました】小さな白い花弁には巧妙に陰付けされ遠方からでも視認できます。 根が視線を捉え、葉の下端カーブに沿い上の方に大きく視線を誘導。楕円形の花群の中で視線が小さく回り花の細部を見せる。濁りのない彩色が美しく、こんな風に描きたいと思う人は多いでしょう。 根の描写・彩色が的確、ラン特有の微妙な色味が魅力。現物観察の賜物です。左の花下の茎の赤茶色部分に視線が向かいます。茶色系は予想以上に視線を引き付ける強い色なので安易に使わない。 コチョウラン: 稲田善和【これは交配品種か。『幸せが(蝶のように)飛んでくる』(花言葉)らしいから、この絵を玄関にでも飾っておこうか】葉の厚みと硬さ、S字状茎で硬柔と動きを感じる。 白い花の背景に葉を置き、緑と白のコントラストが高い部分に視線を誘導するつもり。最初の注視点を赤紫色の蕾に置いた。花弁へはそれとなく視線を導きました。 丸い大きな花弁と葉、蔓を使って何重かの回転を作る。わずかな赤紫色を使い葉色と補色対比させた。花弁の黄緑色の黄と緑トーン調整により微妙な注視点を設けた。 ユウガオ(小池昇司):薄い筋の多い白花の彩色に試行錯誤。構図は事前に構想済み。一日花、妖艶な甘い香りに染まりながらチマチマせずに一気に描きました。 Related Images: